ネキリムシとは、カブラヤガとタマナヤガという蛾の幼虫です。新芽や苗を切り取ることから、ネキリムシと呼ばれています。ここではネキリムシとはどういう虫なのか、その特性と、ネキリムシを駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法についても解説します。
そもそも、ネキリムシはどういう害虫?
ネキリムシとは?
ネキリムシは鱗翅目ヤガ科のカブラヤガ、タマナヤガの幼虫です。ネキリムシという名前ですが、いわゆる「根」を切ってしまうというよりは、新芽や定植した苗の根元をかじり、切ってしまいます。ある程度茎が硬くなるまで成長した野菜の苗は切ることができません。
昼間は土中に潜り、寝て過ごし、夜になると地表に出て活動する夜行性です。切った草や野菜の葉を地中で食べます。幼虫が生育すると、土壌の中で蛹になり、やがて成虫になります。
どうしてネキリムシは害虫なのか?
ネキリムシは夜に新芽の根元を切ってしまい、切られた苗、株はもちろん駄目になってしまいます。このように、農業において多大な食害を及ぼすため、メジャーな害虫として認識されています。
ネキリムシに効く農薬
ネキリムシは農作物の代表的な害虫のため、下記のように、多くの適用農薬があります。
ネキリムシに効く代表的な農薬
有機リン系 オルトラン、カルホスなど
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオンがあり、カメムシの場合、エルサンが適用できます。
ネオニコチノイド系 ダントツなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
ネキリムシに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、ネキリムシに効く代表的な農薬は以下のようになります。
また、家庭園芸用で住友化学園芸のネキリベイトという商品があります。こちらはペルメトリンという、ピレスロイド系の成分の農薬です。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はネキリムシ類だけでなく、カメムシ、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
防除する際のポイント
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させるために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
物理的防除
ネキリムシは農作物の新芽、苗の根元にやってきて切るため、物理的に根元に近づけさせない防除方法が効果的です。
具体的には、アルミホイルやトイレットペーパーの芯を短く切ったもので株元を囲うことで、ネキリムシの被害を防ぐことができます。ペットボトルを3cm幅で輪切りにしたものでももちろん大丈夫です。
農家の方で、ポットの底をくり抜いて、ポットごと畑地に植えることで、ネキリムシを株元に近づけないようにしている方もいらっしゃいます。
その他
ネキリムシは、野菜の苗というよりも、雑草、植物全般が大好きです。これを利用して、ネキリムシが大好きな雑草、ホトケノザ、ハコベなどを畑の影響がない場所にまとめて置いて、ネキリムシを誘き寄せて、まとめて捕まえ、退治する方法を取られている方もいます。
まとめ
ネキリムシ(根切り虫)は、土耕で野菜の栽培をされている農家にとっては、非常に厄介な、忌避される害虫です。ピーマン、トマト、キュウリなどの果菜類、レタス、キャベツ、ブロッコリーなどの葉菜類や、ダイコンなどの根菜類、豆類などのあらゆる播種、発芽、定植した大事な苗に、かなりの食害をもたらします。本記事が、ネキリムシの適切な防除の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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