最近では、野菜や果樹を育てる園芸をくらしの中にとり入れる人も増えてきました。庭木、花木、草花を育てるガーデニングは既に市民権を得た感もあり、関連用具や機器も充実しています。家庭菜園、畑、庭、花壇などを手軽に耕せる耕運機もあるので、ぜひ活用してみましょう。
この記事では、手動耕運機と手押し耕運機について紹介します。
手動耕運機とは?手押し耕運機とは?
手動耕運機とは、エンジンやモーターなどの動力を利用しない耕運機のことを指します。他方、手押し耕運機とは、動力を利用する耕運機のうち、乗用耕運機のように座ることなく押して使う耕運機のことを指すことが一般的です。ただし、いずれも明確な定義はなく、人によってイメージするものが異なるというのが実情です。
なお、手動耕運機のように動力を利用せず比較的単純な構造をもつ道具を「農具」とよび、手押し耕運機のように動力を利用する比較的複雑な構造をもつ機械を「農業機械」とよぶことがあります。そして、その両者を合わせたものを「農機具」とすることがありますが、これらの使い分けもあまり厳密ではないのが実情です。
主な手動耕運機
手動耕運機は、エンジンやモーターなどの動力を利用しないため、土を深く耕すことはできません。その反面、耕運爪を深く入れたくない庭や花壇であったり、雑草を取り除く中耕除草作業であったりに適しています。土壌や用土を攪拌する目的で使用するとよいでしょう。
マルチスター Crumbler DA-S
「マルチスター Crumbler DA-S」は、ウルフガルデン(WOLF Garten)が開発販売する手動耕運機です。ウルフガルデン(WOLF Garten)のウルフは狼、ガルデンはGardenつまり庭園の意味で、ドイツのガーデニングおよび園芸用品メーカーとして1920年代からその製品を世に送り出し続けています。鋸、剪定鋏、刈込鋏、芝刈り鋏、リール式芝刈機、ローラー式芝生清掃レーキ、スモールレーキ、ガーデングローブ、運搬用カートなど幅広く製品を取り扱っています。
マルチスター(multi-star)シリーズは、金属(アルミニウムやスチール)および樹脂製の柄に相当するハンドル部分、アタッチメント部分に相当するツール部分を組み合わせてセットで使用します。そのうちのひとつが、「マルチスター Crumbler DA-S」です。
マルチスター(multi-star)シリーズでは、柄に相当するハンドル部分はそのままに、アタッチメント部分に相当するツール部分をジョイントして様々な用途に利用できます。具体的には、鍬、鋤、熊手、種子散布機、レーキなどとしても利用できるので、便利かつ経済面でのメリットもあります。
たがやすパワー
「たがやすパワー」は、向井工業が開発販売する中耕除草機です。向井工業は、種子散布機、農薬散布機、除草剤散布機、野菜袋詰機などでもよく知られるメーカーです。中でも、種子散布機の「ごんべえ」シリーズは、手押しタイプからトラクターのロータリーに牽引させるタイプまで幅広く取り揃えており有名です。
「たがやすパワー」は、鍬の代わりに押し引きして使用することが想定されている中耕除草機ですが、庭や花壇を浅く耕すことができればよい場合には十分に目的を果たせるでしょう。TP50、TP70、TP90の3種類があり、それぞれサイズが異なりますが、重量2.1~2.5kg、刃幅5~9cmとなっています。中耕除草作業では、栽培作物の畝間を浅く耕すことで、土壌の通気性を向上させるとともに、雑草を除去することができます。また、培土板(培土器)が装着できるので、土寄せ作業、追肥時の溝切り作業も中耕除草と同時に行えます。
主な手押し耕運機
本格的に農耕もしくは耕作したい場合には、手動耕運機では不十分なので、手押し耕運機の使用を検討してみましょう。
家庭用耕運機
家庭用耕運機は、家庭菜園、園芸、ガーデニングなどでの使用を想定した耕運機です。住宅地で使用するケースもあるため、排気ガスが出ず、オイル交換などのメンテナンスも必要ない電動耕運機の人気があります。
電動耕運機は、充電式と電気式に分類することができます。充電式は、充電池やバッテリー(リチウムイオンバッテリー)を搭載している耕運機で、コードレスで場所を選ばずどこでも使えるメリットがある一方で、連続使用時間が限られてしまうことや高価であることがデメリットに挙げられます。電気式は、電源コード先端の電源プラグをコンセントに接続することで家電のように使える耕運機で、軽量かつ充電切れの心配がないメリットがある一方で、移動および作業できる範囲が限られてしまうデメリットがあります(家庭菜園の範囲であれば、延長コードを利用することによってデメリットを十分カバーできるとの見方もあります)。
家庭用耕運機の別の特徴として、農業機械メーカー以外からも製品が展開されていることがあります。たとえば、DIY工具メーカーであるブラックアンドデッカー(Black&Decker)、ナカトミ(NAKATOMI)と山善(YAMAZEN)の共同ブランドであるドリームパワー(DREAM POWER)などの耕運機が有名です。
ミニ耕運機
ミニ耕運機は、大手農業機械メーカーの製品のうち、小型の耕運機を表すことが多いです。大型耕運機やトラクターなどの大きなサイズの農業機械を扱うので、最小サイズの耕運機という意味で、ミニ耕運機とされているものと考えられます。したがって、ミニという言葉の響きとは裏腹に、300ml近い排気量のエンジンを搭載し、600坪くらいまで耕せる本格的な耕運機もあります。家庭用耕運機と比べると重量は大きいですが、車軸ロータータイプだけでなく車輪(尾輪もしくは双輪)やタイヤ付が標準仕様のタイプもあるので、移動や持ち運びも楽に行えます。
ミニ耕運機のもうひとつの特徴として、別売りのアタッチメントを装着することで耕運以外の農作業も行えることがあります。たとえば、培土器(パープル培土器、グリーン培土器、ニューイエロー培土器など)を使っての畝立て、スパイラルローター(イエロースパイラルローターやブルースパイラルローターなど)を使っての除草、レーキやレベラーを使っての整地、マルチシートを張るマルチングなどが行えます。フロントロータリータイプの耕運機では、耕運機本体とアタッチメントとの取付金具であるヒッチ(スマートヒッチやニューM型ヒッチなど)が接続時に必要となることがあります。
ミニ耕運機の動力源には、ガソリンのほか、電気やガスボンベ(カセットガス)を利用するものもあります。代表的なミニ耕運機は、以下の通りです。
製品 | クボタ 菜レント TME15 | クボタ TMC200 | クボタ TMS200 | クボタ ミディstyle TMS30-M5TUE3 | クボタ 菜ビstyle TRS30 | クボタ 陽菜Smile TRS500 | クボタ TRS900 | ヤンマー QT17 | ヤンマー YK750SP,Z | ヤンマー YK3000FP | イセキ KMR400SDUH | イセキ KCR507SDU | イセキ KCR605HXW | VAC3600 | 三菱 ELR20 | ホンダFV200 | マキタ MUK360DZ | マキタ MKR0250H | マキタ MKR0360H | マキタ MKR036 2H | マキタ MKR036H | マキタ MKR0760H | マキタ MKR0761H | ||||||||||||||||||
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動力源 | 電気 | ガス | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガス | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガス | ガス | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | 電気 | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | ガソリン | 電気 | 50(ガソリン):1(2サイクル専用オイル) |
タイプ | 車軸ローター | 車軸ローター | 車軸ローター | 車軸ローター | フロントロータリ | リアロータリ | リアロータリ | リアロータリ | フロントロータリ | 車軸ローター | 車軸ローター | リアロータリ | リアロータリ | フロントロータリ | フロントロータリ | リアロータリ | リアロータリ | リアロータリ | 車軸ローター | 車軸ローター | リアロータリ | フロントロータリ | 車軸ローター | リアロータリ | 車軸ローター | フロントロータリ | 車軸ローター | 車軸ローター | 車軸ローター | フロントロータリ | リアロータリ | リアロータリ | 車軸ローター | 車軸ローター | 車軸ローター | リアロータリ | フロントロータリ | リアロータリ | リアロータリ | 車軸ローター | 車軸ローター |
全長×全幅×全高(mm) | 1137×485×891 | 1125×480×1065 | 1100×575×980 | 1200×650×1080 | 1370×550×1090 | 1285×490×1050 | 1520×620×1035 | 1850×720×1170 | 1630×680×1070 | 1060×540×960 | 1265×620×1030 | 1470×610×1130 | 1565×710×1125 | 1225×555×1050 | 1235×540×1095 | 1320×580×1030 | 1440×580×1150 | 1525×600×1035 | 1060×540×960 | 1085×550×965 | 1375×575×1090 | 1370×550×1090 | 1100×575×980 | 1355×575×1090 | 1055×485×990 | 1465×465×1015 | 1060×475×990 | 1115×585×975 | 1340×655×1080 | 1465×465×1015 | 1385×560×1050 | 1480×570×1025 | 1119×488×925 | 1,075×480×977 | 1140×660×1060 | 1355×575×1090 | 1370×550×1090 | 1340×600×1130 | 1340×600×1130 | 1040×480×965 | 1040×480×965 |
重量(kg) | 21 | 27 | 22 | 42 | 53 | 52 | 87 | 158 | 125 | 20 | 37 | 80 | 139 | 55 | 62 | 77 | 91 | 101 | 20 | 35 | 60 | 54 | 22 | 61 | 20 | 54 | 18 | 27 | 52 | 51 | 71 | 93 | 23.2 | 18 | 37 | 61 | 53 | 86 | 87 | 18.5 | 19 |
最大出力(馬力) | 0.4 | 1.9 | 2.2 | 2.7 | 3.0 | 3.0 | 4.2 | 7.0 | 6.3 | 1.6 | 3.0 | 4.2 | 7.0 | 3.0 | 2.7 | 3.8 | 4.1 | 5.4 | 1.6 | 2.7 | 2.2 | 3.0 | 2.2 | 3.0 | 1.5 | 1.6 | 2.2 | 2.0 | 4.9 | 2.0 | 3.3 | 4.9 | 0.98 | 1.4 | 3.0 | 3.0 | 3.0 | 6.3 | 6.3 | – | 1.7 |
耕運幅(mm) | 400 | 420 | 575 | 650 | 500 | 450 | 550 | 600 | 600 | 480 | 550 | 500 | 600 | 500 | 500 | 500 | 500 | 550 | 480 | 550 | 500 | 500 | 575 | 500 | 350 | 450 | 450 | 545 | 630 | 410 | 460 | 510 | 350 | 430 | 600 | 500 | 500 | 550 | 550 | 360 | 360 |
対応面積目安(坪) | ~30 | ~20 | ~30 | ~30 | ~120 | ~120 | ~270 | ~600 | ~600 | ~30 | ~50 | 60~ | 60~ | ~120 | ~30 | ~120 | ~270 | ~270 | ~50 | ~80 | ~30 | – | – | – | ~30 | ~100 | ~30 | ~100 | ~300 | ~100 | ~100 | ~300 | ~20 | ~30 | ~150 | ~150 | ~150 | ~300 | ~300 | ~30 | – |
希望小売価格(税込) | 109,780円 | 109,780円 | 89,800円 | 106,480円 | 162,030円 | 157,080円 | 186,230円 | 385,000円 | 308,440円 | 82,500円 | 98,780円 | 183,700 | 363,000円 | 167,200円 | 190,300円 | 187,000円 | 242,000円 | 274,320円 | 72,600円 | 100,100円 | 163,900円 | 160,600円 | 91,300円 | 159,500円 | 109,780円 | 209,000円 | 75,900円 | 109,780円 | 149,380円 | 177,980円 | 175,780円 | 250,800円 | 102,960円 | 94,050円 | 161,700円 | 218,900円 | 220,000円 | 295,900円 | 326,700円 | 61,000円 | 91,000円 |
まとめ
手動耕運機とは、エンジンやモーターなどの動力を利用しない耕運機のことを指します。他方、手押し耕運機とは、動力を利用する耕運機のうち、乗用耕運機のように座ることなく押して使う耕運機のことを指すことが一般的です。ただし、いずれも明確な定義はなく、人によってイメージするものが異なるというのが実情です。
なお、手動耕運機のように動力を利用せず比較的単純な構造をもつ道具を「農具」とよび、手押し耕運機のように動力を利用する比較的複雑な構造をもつ機械を「農業機械」とよぶことがあります。そして、その両者を合わせたものを「農機具」とすることがありますが、これらの使い分けもあまり厳密ではないのが実情です。
手動耕運機は、エンジンやモーターなどの動力を利用しないため、土を深く耕すことはできません。その反面、耕運爪を深く入れたくない庭や花壇であったり、雑草を取り除く中耕除草作業であったりに適しています。土壌や用土を攪拌する目的で使用するとよいでしょう。主な手動耕運機として、ウルフガルデン(WOLF Garten)の「マルチスター Crumbler DA-S」、向井工業の「たがやすパワー」などがあります。
本格的に農耕もしくは耕作したい場合には、手動耕運機では不十分なので、手押し耕運機の使用を検討してみましょう。手押し耕運機の一種である家庭用耕運機の特徴として、農業機械メーカー以外からも製品が展開されていることがあります。たとえば、ブラックアンドデッカー(Black&Decker)の「ミニ耕運・除草機 LGC120」、ドリームパワー(DREAM POWER)の「電気カルチベータ ERC-10D」などの耕運機があります。家庭用耕運機よりも大きなサイズを指すミニ耕運機では、300ml近い排気量のエンジンを搭載した本格的な製品があったり、耕運以外の管理作業(畝立て、除草、整地、マルチングなど)ができる製品があったりします。
大手耕運機メーカーとしては、クボタ(KUBOTA)、ヤンマー(YANMAR)、イセキ(ISEKI)、ホンダ(HONDA)、マキタ(makita)、リョービ(RYOBI)、オーレック(OREC)、オカネツ工業(OKANETSU)などもあります。これから耕運機を探すという人は、あわせてチェックしてみてもよいかもしれません。