緩効性肥料とは
緩効性肥料とは、施肥したときから効き始め、少しずつ溶け出して長期間効果が持続する肥料のことを指します。「緩効性肥料」の読み方は「だんこうせいひりょう」ではなく、「かんこうせいひりょう」です。元肥、追肥、どちらにも使用することができます。
緩効性肥料の例としては、以下のようなものがあります。
緩効性肥料の肥料の効き方は、下の図をイメージするとわかりやすいです。速効性肥料は施肥してから1週間〜10日前後で肥料の効果がほぼなくなりますが、緩効性肥料は1ヶ月〜2ヶ月程度は肥料の効果が持続します(商品によって持続する効果、溶出量、成分は異なります)。
速効性肥料、遅効性肥料など他のタイプについても詳しく知りたい場合は、下の記事をご覧ください。
緩効性肥料のおすすめの使い方
緩効性化成肥料のおすすめの使い方
緩効性化成肥料にはコーティングされた被覆複合肥料とク溶性や不溶性の原料を使用した肥料があります。どちらも、元肥にも追肥にも使える肥料ですので、使用用途に合わせて選んで施肥をしましょう。
被覆複合肥料は、窒素(チッソ)、リン酸(リンサン)、カリウム(カリ)がバランスよく含まれている肥料が多いです。園芸や家庭菜園用の肥料は、このタイプの肥料が多いです(白や黄色などの被覆に覆われた大小の粒が入っていると思います)。「一発肥料」など元肥だけで育てられるように作られている肥料もこの仲間です。
ク溶性や不溶性の原料が含まれている(配合されている)肥料は、その成分に注目しましょう。例えば、含まれているリン酸がく溶性である場合、元肥に混ぜ込んでおくことによって実が付く頃にはリン酸が徐々に溶出し、植物がリン酸を吸収できるようになります。
緩効性化成肥料は、種類やタイプ、含まれている成分などによって違いがあり、様々な商品があるのでその商品にあった使い方を調べておくことが重要です。
緩効性の有機質肥料のおすすめの使い方
ここでは緩効性の有機肥料である「油かす(油粕)」と「骨粉」について、おすすめの使い方を解説します。
油かす(油粕)
油粕(油かす)は、ナタネ(菜種)やダイズ(大豆)から油を搾る工程の残りかすを指し、それを主な原料として使用する有機(有機物)肥料を油かす肥料と呼びます。
市販されている油かす肥料のほとんどは緩効性肥料であり、ゆっくり穏やかに効くようにできています。そのため、元肥また生育初期段階の追肥などにも使用することができます。植物の根にも優しく扱いやすい肥料です。
骨粉
骨粉は、「蒸製骨粉(牛や豚、鳥(ニワトリなど)の骨を粉砕して高温で長時間加圧しながら蒸製したもの)」「生骨粉(生の乾燥させた骨を粉砕したもの)」「肉骨粉(内蔵やくず肉、血液などが混ざって粉砕されたもの)」があります。ここでは一般的に広く販売されている「蒸製骨粉」に絞って解説します。
骨粉は、窒素(チッソ)、リン酸、カルシウムを多く含んだ有機質肥料です。骨粉に含まれるリン酸はカルシウムと結合しており、分解されて肥料の効果が出るまでに時間がかかるため元肥として施されることが多いです。特にリン酸が多く含まれており、ゆっくりと穏やかに効いてくるので、実肥・花肥として重宝されています。
緩効性化成肥料のおすすめ商品
ここでは緩効性化成肥料について、おすすめ商品をご紹介します。有機質肥料(油かすや骨粉など)については、下の記事にて購入方法や選び方を解説していますのでぜひご覧ください。
一発肥料
「一発肥料」とうたわれている商品です。いろいろなメーカーからその作物用の肥料が販売されています。一度、元肥として施せば追肥がいらないという商品なので、気軽に育てたい方、初心者にはおすすめです。また、ホームセンターにもオリジナルの一発肥料(緩効性肥料)が販売されています。
有機質主体の一発肥料もあります。
マイガーデン
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、粒状の様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得していることや、土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしていることや、肥料成分は樹脂コーディングされていて、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが本製品の特長です(リリースコントロールテクノロジー)。
ハイポネックス
ハイポネックスは、液体肥料である「ハイポネックス原液」が有名ですが、実は観葉植物、野菜など幅広い作物向けの固形肥料も販売しています。その中でも人気のある商品は「マグァンプK」です。「マグァンプK」は元肥にも追肥にも使える商品で適用作物も広く、家庭菜園や小規模農場などでいろいろな作物を育てている方にはとても便利です。
緩効性肥料のわかりやすい種類分け
緩効性肥料は、大きく2つの分類に分けることができます。
緩効性の化学肥料、有機肥料について、詳しく解説します。
緩効性化成肥料の概要と特徴
緩効性化成肥料は、大きく2つの分類に分けることができます。
表面を被覆した肥料
水溶性の化成肥料を一度に溶け出さないように表面を樹脂などで覆った肥料です。樹脂などで覆われていることから「被覆複合肥料」と呼ばれます。樹脂の厚さや素材によって溶け出すまでの時間や溶け出し続ける期間をコントロールしています。そうすることで、長くバランスよく肥料成分を与え続けることができます。
緩効性の成分を使用した肥料
無機質のク溶性や不溶性原料、さらには水溶性原料を混ぜ合わせた肥料です。使用する原料によって、肥効の効き始めや持続期間は異なります。その違いを利用して特定の成分だけを持続させる肥料など様々なタイプのものがあります。また、有機質を配合することで緩効性を備えた「有機配合肥料」というものもあります。
緩効性化学肥料・緩効性化成肥料の違いは?
まず、「緩効性化学肥料」と「緩効性化成肥料」の違いは何でしょうか?答えは「緩効性化成肥料は緩効性化学肥料に含まれる肥料」です。
化学肥料とは、化学的に合成、あるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。有機肥料(有機質肥料)は動植物質を原料とした肥料(堆肥や米ぬか、骨粉など)です。
化学肥料は大きく2つに分けることができます。
- 「単肥(たんぴ)」:無機養分一つのみを保証する肥料
- 「複合肥料」:窒素、りん酸、カリウム(加里)のうち二つ以上の成分を保証する肥料
「化成肥料」は、化学肥料(複合肥料)に含まれるものとなります。
よって、「緩効性化成肥料は緩効性化学肥料に含まれる肥料」ということになります。普通の園芸や菜園、小規模農家などで使用する肥料は2つ以上の成分を保証した化成肥料であることが多いので、ここからは緩効性化成肥料に絞って説明します。
緩効性の有機肥料の概要と特徴
緩効性肥料は、化成肥料だけではありません。有機肥料(有機質肥料)も緩効性肥料と呼ばれるものがあります。有機質は基本的には不溶性であり、土中の微生物などに分解されることで植物が吸収できる養分となります。
有機肥料には、緩効性のものと遅効性のものに大きく分類されます。緩効性の有機肥料は、微生物による発酵処理や燃やして灰にする処理などを行うことによって有機質の分解を促進させたものとなります。以下に有機肥料の例と肥効のタイプを紹介します。肥効のタイプはあくまで有機肥料の中で比較した場合のことを指しています。
肥料 | N (窒素) | P (リン酸) | K (カリウム) | 肥効のタイプ |
---|---|---|---|---|
油かす(油粕) | 多 | 少 | 少 | 緩効性 |
魚かす(魚粕) | 多 | 中 | 少 | 緩効性・遅効性 (但し窒素分は速効性が高い) |
発酵鶏糞 | 中 | 多 | 中 | 速効性 |
骨粉 | 中 | 多 | – | 緩効性 |
米ぬか(米糠) | 少 | 多 | 中 | 遅効性 |
バットグアノ | 少 | 多 | 少 | 緩効性 |
草木灰 | – | 少 | 多 | 速効性 |
緩効性の液体肥料?
液体肥料は、速効性のものが多いです(ハイポネックス、ハイポニカなど)。しかし、肥料の中に含まれている窒素(チッソ)の成分に特殊な物質(メチレン尿素など)を使ったり、有機質のものを含有することで、緩効性の液体肥料として販売されているものもあります。
しかし、液体肥料は文字通り液体であり、潅水や雨などによって土壌の地下などに流れ出しやすいため、ゆっくり長く効かせるには難しいです。
液体肥料については下の記事で詳しくまとめていますので、ぜひ一度ご覧ください。
緩効性化成肥料の購入
店舗での購入
上記で紹介した緩効性の肥料は、一般的な大規模ホームセンターでも販売されています。ただし、作物に特化した専門肥料はコメリなど、農業・園芸に特化したホームセンターにしかない場合があります。
また、ダイソーにも緩効性化成肥料や有機肥料が販売されていることがありますが、取り扱いのない店舗も多いようなので注意が必要です。
通販で購入する
店舗で実物をみて購入することも良いことですが、「その店舗での取り扱いがない」ことや「そもそもその商品がホームセンターなどの小売店で販売されていない」ことも多いです。時間とお金を節約するため、積極的に通販(インターネットショッピング)を利用しましょう。今ではAmazonや楽天市場など様々なECサイトで農業・園芸用品が取り扱われています。店舗よりも安く購入できる場合も多いですので、一度のぞいてみましょう。