殺虫剤グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した殺虫剤で、有効成分「フルキメタミド」により、従来の殺虫剤で効きにくかったコナガやアザミウマに大きな効果が期待できる殺虫剤です。
ここでは、農薬グレーシア乳剤とはどんな殺虫剤なのか、特長や、効果と注意点を説明していきます。
グレーシア乳剤とは、どんな殺虫剤?
グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。
コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。
グレーシアは従来のネオニコチノイド系や有機リン系化合物などの殺虫剤では効きにくかった、つまり抵抗性を獲得している害虫に対しても高い殺虫効果を発揮します。
このため、既存の殺虫剤とのローテーション散布も可能です。
グレーシア乳剤の有効成分、性状
- フルキサメタミド・・・10.0%
有効成分のフルキサメタミドは、イソオキサゾリン系の有効成分で,抑制性の神経伝達物質であるGABA受容体に結合し、Cl-の流入を阻害し外注に持続的な興奮状態、症状を起こし、殺虫する効果があります。
性状は、黄赤色澄明可乳化油状液体になります。乳剤なので、水で希釈して散布します。農薬の希釈については下記をご参考ください。
グレーシアのIRACコードはメタジアミド系「30」です。
グレーシア乳剤の特長
グレーシア乳剤の最大の特徴は、ネオニコチノイド系や有機リン系化合物などの既存の殺虫剤とは構造が異なるフルキサメタミドによる今までの殺虫成分にはない新しい作用によって、害虫を駆除する点です。既存の殺虫剤に抵抗性がある害虫に効く可能性が高胃効果を発揮しています。
また、高い即効性(速効性)がありながらも、茎葉への散布処理によって約2週間の効果が持続する優れた残効性がある点も大きな特長と言えるでしょう。グレーシア乳剤は植物体への浸透移行性はありませんが、有効成分が葉組織内で葉表から葉裏に拡散する浸達性があり、葉裏の害虫もしっかり防除することができます。
さらに、グレーシア乳剤は雨にも強く、散布後に降雨があっても効果が落ちづらい薬剤であることもポイントです。
加えて、殺虫剤はミツバチ、マルハナバチに影響を与えてしまうことが多いですが、各地で安全性の試験を実施から、グレーシア乳剤はミツバチ、マルハナバチには高い安全性があることが確認されている点も特長と言えるでしょう。
使用するときに注意したい点
その他
ミツバチ、マルハナバチには高い安全性があることが確認されていますが、天敵への影響は現在調査中なので、IPM(総合的害虫管理)で天敵と併用する場合は注意が必要です。
効果・薬害・毒性
グレーシア乳剤は以下のように、幅広い「適用作物」と「適用病害虫名」に対応しています。
作物名 | 適用病害虫名 |
---|---|
さといも | ハスモンヨトウ |
かんしょ | ナカジロシタバ、 ハスモンヨトウ、 コナジラミ類、 ハダニ類 |
だいこん | コナガ、アオムシ、 ハイマダラノメイガ、 カブラハバチ、 キスジノミハムシ |
はくさい | コナガ、 アオムシ、 ハスモンヨトウ、 ヨトウムシ、 ハイマダラノメイガ、 オオタバコガ、 ネギアザミウマ |
キャベツ | コナガ、 アオムシ、 ウワバ類、 ヨトウムシ、 ハスモンヨトウ、 オオタバコガ、 アザミウマ類、 ハイマダラノメイガ |
カリフラワー | コナガ、 アオムシ、 ネギアザミウマ、 ハスモンヨトウ |
ブロッコリー | コナガ、 アオムシ、 ヨトウムシ、 ハスモンヨトウ、 ウワバ類、 オオタバコガ、 ハイマダラノメイガ、 ネギアザミウマ |
レタス、非結球レタス | ヨトウムシ、 ハスモンヨトウ、 オオタバコガ、 ナモグリバエ、 アザミウマ類 |
たまねぎ | ネギアザミウマ |
ねぎ | ネギコガ、 ネギハモグリバエ、 シロイチモジヨトウ、 アザミウマ類 クロバネキノコバエ類 |
トマト ミニトマト | ハスモンヨトウ、 オオタバコガ、 コナジラミ類、 アザミウマ類、 トマトサビダニ、 トマトハモグリバエ |
ピーマン | オオタバコガ、 アザミウマ類、 コナジラミ類、 ハダニ類、 チャノホコリダニ |
なす | コナジラミ類、 アザミウマ類、 ハダニ類、 チャノホコリダニ、 ハスモンヨトウ、 オオタバコガ、 トマトハモグリバエ |
きゅうり | アザミウマ類、 ハスモンヨトウ、 ウリノメイガ、 ハダニ類、 コナジラミ類、 トマトハモグリバエ |
すいか | オオタバコガ、 ウリノメイガ、 アザミウマ類、 コナジラミ類、 ハダニ類、 ハスモンヨトウ |
メロン | アザミウマ類、 コナジラミ類、 ウリノメイガ、 ハダニ類 |
だいず | マメシンクイガ、 ハスモンヨトウ、 ハモグリバエ類、 ウコンノメイガ、 オオタバコガ、 フタスジヒメハムシ |
豆類 (未成熟、ただし、えだまめを除く) | ハスモンヨトウ、 ハモグリバエ類 |
えだまめ | マメシンクイガ、 ハスモンヨトウ、 ハモグリバエ類、 ウコンノメイガ、 オオタバコガ、 フタスジヒメハムシ |
いちご | アザミウマ類、 ハスモンヨトウ、 オオタバコガ、 ハダニ類 |
茶 | チャノコカクモンハマキ、 チャハマキ、 チャノキイロアザミウマ、 チャノミドリヒメヨコバイ、 マダラカサハラハムシ、 ヨモギエダシャク、 チャノホソガ、 チャトゲコナジラミ サビダニ類、 チャノホコリダニ |
きく | ハスモンヨトウ、 ハダニ類、 オオタバコガ、 アザミウマ類 |
りんどう | リンドウホソハマキ、 ハダニ類、 アザミウマ類 |
ゆり | ネダニ類 |
下記の有効成分を含む農薬の総使用回数(年限)は以下の通りなので、使用回数には注意してください。
- フルキサメタミド 1〜2回
フルキサメタミドを含む農薬の使用可能回数(年限)は、適用作物によって1〜2回と変わってきます。適用作物と使用回数をよく確認するようにしましょう。
グレーシア乳剤の効果を高めるために
薬液を広範囲にまく際には、効果的に散布できる散布機(噴霧機)やスプレイヤーの使用をおすすめします。
まとめ
グレーシア乳剤の最大の特徴は、新規系統の殺虫剤のため、既存の殺虫剤に抵抗性がある害虫に効く可能性が高いこと、また高い即効性(速効性)がありながらも、茎葉への散布処理によって約2週間の効果が持続する優れた残効性がある点、降雨に強い点も大きな特長です。
従来のネオニコチノイド系や有機リン系化合物の殺虫剤を散布しても、害虫が集団で生存している等、抵抗性が疑われる場合には、是非グレーシア乳剤での防除を試してみてください。
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