トマトは、ビタミンC、カロテン、リコピンなどを多く含み、栄養や機能性に優れた野菜です。また、イタリア料理はもちろんのこと、日本でも家庭料理によく使われる人気の作物です。
栽培の時期や期間、方法によって、栽培の管理が異なります。家庭菜園では、プランターや鉢植えなどでも育てることができ、比較的手軽に栽培できる作物です。トマトとミニトマトでは、栽培の難易度が異なり、基本的にミニトマトのほうが育てやすく、トマトのほうが難しいと言われています。しかし、管理作業をしっかり行えば、トマトでも問題なく収穫まで栽培することができます。
日本ではプロ農家がビニールハウスを使った施設栽培(ハウス栽培)で長期間栽培(長期採り)されることが多く、トマトが一年中スーパーの店頭に並びます。
この記事では、トマトの栽培時期や作型について、幅広く解説します。
トマト栽培やミニトマト栽培の流れ、土作りの方法、管理作業(手入れ作業)、水耕栽培などについては、下記の記事を参考にしてください。
まずはおさらい!トマトの基礎知識
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格の価格(円/1粒) | 苗の価格の価格(円/1苗) | 収穫までの日(目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度(pH) | 連作障害 | 発芽適温 | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
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トマト | ナス科 | 南アメリカ | ★★★★☆ | 10円〜50円程度 | 200円〜1,000円程度 | 開花から40日〜60日 | 全国 | 促成栽培 半促成栽培 抑制栽培 など | 露地栽培 プランター・鉢植え栽培 雨よけ栽培 施設栽培養液栽培 養液土耕栽培 | 6.0〜6.5 | あり(3〜4年) | 25〜28℃ | 10〜30℃ | 日なた | 70klx |
トマトは、南アメリカのペルー・エクアドルなどのアンデス山脈高原地帯原産の作物です。日本では糖度の高いフルーツトマトやミニトマトが注目されていますが、昔ながらの味わい深いトマトも根強い人気があります。レシピも豊富にあるのでいろいろな楽しみ方ができます。
トマトの栽培方法の種類と栽培の時期、作型
トマトの栽培方法の種類と栽培の時期について、おさらいしましょう。
栽培方法の種類と栽培の時期
栽培方法の種類として、トマトの場合、主に以下のようなものが挙げられます。管理方法の違いまで含めると、さまざまな方法がありますので、ここでは栽培環境の違いに着目しています。
- 露地栽培(プランター栽培、鉢植え栽培含む。普通栽培と呼んだりもします)
- 雨よけ栽培
- 施設栽培(ハウス栽培)
栽培の時期は、上記の栽培方法によっても異なってきます。例えば、北海道でトマトを栽培する場合、露地栽培は夏秋の暖かい時期しかできませんが、ハウス栽培ですと暖房機などで加温することで周年栽培にすることができます。
作型とは
露地栽培や雨よけ栽培など自然条件下での栽培においてはその地域の気候によって栽培時期を決定、施設栽培(ハウス栽培)においてはその地域の気候と使用する設備(暖房機など)によって栽培時期を決定しています。施設栽培のように、自然条件下とは異なる環境を作り出して栽培する栽培時期のことを、一般的に「作型」といいます。
農家として営農するときには、「価格(単価)」が重要となってきます。作型は、実際にはその地域の気候によって決まっているのではなく、「いつ出荷すると単価が安定して高いか」を分析して決めています。そして、その作型に合わせるために必要な設備を揃えて、栽培しています。各地域によって栽培マニュアルがあるのも、地域の気候差などもありますが、その地域が産地リレー(生産地のリレー)のどの時期を担っているかの要素も大きいです。
作型は、主に下記の4つに分けることができます(他にも作型はあります)。実際には、半促成や半抑制など気候を活かした作型が取られることが多いです。
作型 | 説明 |
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促成栽培 | 露地栽培よりも早く出荷する作型。一作を通じてハウスで加温・保温することで成り立つ。 |
半促成栽培 | 露地栽培よりも少し早く出荷する作型。生育前半をハウスなどで加温・保温し、後半になるとハウスの被覆を剥がすなど自然環境下の栽培条件に近づけていく。 |
早熟栽培 | 育苗期間のみ温床内で栽培する作型。定植(植え付け)からは、自然環境下で栽培する。 |
抑制栽培 | 露地栽培よりも遅く出荷する作型。その土地や地域の冷涼な気候、電照などの栽培技術を生かして、開花時期や収穫時期を遅らせる。 |
周年栽培 | ハウス栽培で暖房機で加温・保温したり、細霧冷房などで冷却することでほぼ一年中栽培・収穫できるようにする作型。栽培期間を複数に分けたり、ハイワイヤーのオランダ式ハウスで長期穫りするなど、やり方はさまざま。 |
トマト栽培はいつできる?露地栽培、雨よけ栽培の場合
基本的な考え方
トマトの露地栽培(プランター栽培、鉢植え栽培含む)や雨よけ栽培は、自然環境下で栽培する栽培方法となりますので、その地域の気候に合わせた栽培時期を選択することになります。このような栽培方法を普通栽培と呼んだりします。
家庭菜園の方もその地域の気候を意識して、植え付け・栽培をすると良いでしょう。
それでは、どのように栽培時期を選択すれば良いでしょうか?まずは、トマトの生育適温をしっかりと理解しておきましょう。大雑把にはなりますが、大事なことは生育適温に近い環境を作り上げ、光を与えられるかです(実際にはもっとたくさんの要素がありますが考えるのはやめましょう)。
発芽適温 | 生育適温(昼間) | 生育適温(夜間) |
---|---|---|
25〜28℃ | 20〜30℃ | 10〜15℃ |
上記の気温を維持できるような環境下が一番良いです。但し、日によっては寒すぎる・暑すぎる日があるのは当然です。そのため、一定期間(1週間〜2週間程度)推移をみて、上記の気温が確保できているかを確認して苗を植えると良いでしょう。
もっと簡単に最適な環境かどうかを確認する方法として、平均気温で判別することもできます。トマトの場合は、平均気温が16℃以上になってくると、昼間(最高気温)も夜間(最低気温)も生育適温を維持できるようになってきます。平均気温16℃に近くなってきたら、苗を植える準備をしましょう。
平均気温は、植物の生長の予測や実の収穫日数の予測にも使用されます。積算温度(有効積算温度)にも平均気温が使われます。
※積算温度など少し難しい話は今後記事にする予定です。
上記のグラフは、2020年4月・5月の東京の最低気温・最高気温・平均気温のグラフです。このグラフを見てもわかるとおり、平均気温が16℃程度になってくると、生育適温が維持しやすい環境になってきます。
東京など一般地では、5月上旬くらいから植え付けるという栽培スケジュールが多いですが、理にかなっているということですね。このように栽培のスケジュールを選択、決定していくと露地栽培でもトマトが生長しやすい環境を作り上げることができます。
もっと簡単に知りたい!トマトの栽培時期(栽培スケジュール)
もっと簡単に知りたいという方に、栽培スケジュールを掲載します。この栽培スケジュールを例に、ご自身の地域に合わせて植え付けの時期などを調整していただければ良いと思います。
栽培の流れとしては、下記のようになります(一般地の露地栽培の場合)。適期に各作業を行うことが重要となってきますので、一連の流れをしっかりと把握しておきましょう。
- 3月上旬〜4月中旬
- 植え付けの2〜3週間前
- 4月下旬〜6月下旬
- 5月〜10月
- 6月下旬〜10月
- 10月頃
- 10月頃片付け
各作業の詳しい内容については、下記のページにも記載していますので参考にしてください!
種まき(播種)
トマトの種まき(播種)方法は大きく2つあります。
- ポットに種をまく方法
- 育苗箱に種をまく方法
発芽適温は、25〜28℃です。ポットの場合も、育苗箱の場合も適温となるように工夫をしましょう。ポットや育苗箱に培養土を入れ、種まきをします。種まき後は昼夜の気温差は小さくし、育苗、成長していくにつれて少しずつ昼夜の気温差を大きくしていきます。
種まきの時期を過ぎた場合や接ぎ木された病気に強い接木苗、健康な苗を手軽に手に入れたい場合は、ホームセンターや園芸店で購入して、育苗、栽培することをおすすめします。現在では、インターネットにて予約購入することもできます。
下の記事に、トマトの育苗期の管理方法について詳しく解説していますので、参考にしてください。
育苗
発芽後、2ヶ月(55日から65日)ほどで、植え付け(定植)適期となります。育苗は栽培において、とても重要な時期となります。「苗半作」という言葉があるくらい重要です。植え付け(定植)適期になるまで大事に育苗しましょう。
土作り・畝立て
トマトをしっかりと栽培し、美味しい果実を収穫するためには土作りが重要です。
土作りは、植え付けの2週間から3週間前には行い始めましょう。堆肥、元肥(石灰や窒素、リン酸、カリウムなどの化成肥料、または有機質肥料)は、土作りをするときに一緒に混ぜ込みます。畝は、1m〜1.2m幅で高さ20〜30cmの高畝にしましょう。下の記事に堆肥や元肥の施用量の目安、畝立ての方法を説明していますので、参考にしてください。
プランターや鉢による栽培の土作りは、ホームセンターにトマト用や果菜類用の培養土が販売されているのでそれらを使うと良いでしょう。もちろん、赤玉土や腐植土、堆肥などを用いて独自で用土を用意することも可能ですが、家庭菜園初心者の方には、まず元肥入りの培養土をおすすめします。
培養土が入った袋をそのまま使った栽培(袋栽培)もできます。
植え付け(定植)
本葉8枚から9枚になったころが植え付けのタイミングです。
その頃には一番花(初めて咲く花)が咲き始めていると思います。植え付けは晴れている日の午前中に行いましょう。植え穴、苗にも予め十分に水やりをしてから植え付けます。植え付けの方法は寝かせ植えが良いとされていますが、接木苗を使う場合には絶対にしないでください。
下の記事に植え付けに関する詳しいことを記載していますので、参考にしてください。
支柱立てを植え付けと同時にやる場合は、このタイミングで支柱を立てて誘引しましょう。
手入れ作業
植え付けがようやく終わると、トマトをしっかりと育てるために手入れ作業が必要です。手入れ作業は大きく8つあります。
- 仕立て、誘引・・・茎を1本仕立てや2本仕立てなどにし、紐で誘引して植物が倒れないようにする
- 受粉・・・確実に着果するように人工的に受粉(授粉)させたりする
- 追肥(肥料)・・・トマトがしっかりと栄養分を補給できるように追加で施肥をする
- わき芽かき・・・無駄な栄養分の消費や繁茂を防ぐためにわき芽をかく
- 葉かき(摘葉)・・・繁茂による病害虫被害を防いだりするために葉かきをする
- 摘心(摘芯)・・・管理作業の効率向上と栄養分の無駄な消費を防ぐために茎の芯を止める
- 摘果・・・無駄な栄養分の消費の防止や生長バランスの調整のために実を摘み取る
- 除草・病害虫管理・・・病害虫による被害をあらかじめ防ぐための管理をする
各作業は、栽培の状況に応じて、適期実施する必要があります。作業のやり方など詳細は下記のページに記載していますので、参考にしてください。
収穫
開花後55から65日ほどで収穫することができます。花の「がく」が反り返ったら収穫適期です。トマトは、昼間に光合成で作った養分を夜間、実に蓄えるので、早朝に収穫すると良いです。収穫バサミなどで切って収穫するか、離層と呼ばれる取れやすい節の部分から引き取るとかんたんに収穫することができます。
摘芯
収穫果房の限界が見えてきたら、摘芯をして残りの栄養成分を現時点で付いている果房に回します。摘芯とは、植物の最上部の生長点(枝が伸び、葉が生成される場所)を切除し、植物の栄養成長を止めることを言います。
収穫果房数(収穫ができる段数)は一般的には4〜5段です。上手い人は6〜7段まで収穫することが可能です。逆に早めに切り上げてしまっても構いません。
着果目標の最上段の花房の上に2枚程度、葉を残し、その上の生長点などを指先で摘み取ります。5段までを着果目標にした場合、5段目の上に2枚程度、葉を残すと良いでしょう。
手が届かなくなるくらいの高さまで育てられたら万々歳ですよ!
トマトの詳しい栽培方法について
露地栽培向けの栽培方法について、下記ページで簡単に説明していますので参考にしてください。
トマトの地域ごとの作型例
トマトの作型は、主に促成栽培(半促成栽培含む)、抑制栽培、周年栽培が多いです。地域や農家(生産者)によって選択される栽培方法が異なります。ここでは一例として、いくつかの地域の作型を紹介します。
消費者の皆さんが一年中、スーパーマーケットで野菜を購入できる理由は、それぞれの産地で、産地に合わせた栽培(作型)がなされ、それがリレーされていくからです。日本は四季がはっきりとしている国ですから、産地リレーを構築し、皆さんに一年中美味しい野菜を届けられるようにするのが、農家、市場、JA、卸売業者の使命なのです。
作型は、気候だけではなく、栽培設備や経営体の規模、その地域の特色(どのような作物を作りたいのか、ブランド化したいのか)、輪作をするのか、複合経営をするのか、などによっても変わってくるので、一概に「この地域だからこの作型」とは言えません。総合的に判断されて栽培されています。
北海道のトマト栽培の作型例
※上記の作型はあくまで一例です。
北海道では、促成栽培、半促成栽培、早熟栽培、抑制栽培が行われており、主に4月〜11月に生産物が出荷される作型が採用されています。
関東地方のトマト栽培の作型例
※上記の作型はあくまで一例です。
関東地方では、促成栽培、半促成栽培、早熟栽培、抑制栽培が行われており、1年中どの季節でも、生産物が出荷される作型が採用されています。
東海地方のトマト栽培の作型例
※上記の作型はあくまで一例です。
東海地方では、促成栽培、半促成栽培、抑制栽培が行われており、ほぼ1年中どの季節でも、生産物が出荷される作型が採用されています。
四国南部・九州地方のトマト栽培の作型例
※上記の作型はあくまで一例です。
四国南部・九州地方では、促成栽培、抑制栽培が行われており、主に9月〜翌6月に生産物が出荷される作型が採用されています。