田んぼや畦(畔)の土中、水中の雑草を放置すると、病害虫の温床になり、作物から養分を吸い取り、品質低下、病原菌の付着を招いてしまいます。このため、稲作には、 除草 、防草が非常に重要です。
しかし、畦(畔)に グリホサート 系のラウンドアップやサンフーロンのような非選択性の(茎葉)吸収移行型を使ってしまうと、根まで枯らしてしまって、畦(畔)を壊す原因になってしまいますし、何より、肝心の稲に影響を与えてしまいます。
このため、たくさんの種類の水稲用の除草剤があります。ここではその中でも非常にメジャーな除草剤ハイカットをご紹介します。
ハイカットとは、どんな除草剤?
ハイカットは日産化学工業が展開する、水稲用の細粒の除草剤です。
ハイカットの有効成分、性状
- 有効成分
- シハロホップブチル・・・1.8%
- ジメタメトリン・・・1.0%
- ハロスルフロンメチル・・・0.90%
- ベンゾビシクロン・・・2.0%
性状は、淡灰色細粒です。
ハイカットの特長
ハイカットは「中期剤」で、「初期剤」の後に使います。
最大の特徴は大きくなってしまったクログワイ、シズイ、オモダカ、ノビエといった、防除が難しい難防除の雑草にしっかり、長く効く点です。
また、従来の「中期剤」と同じように使えますし、「一発処理剤」を散布した後の取り残した雑草の防除としても使用できます。
使用するときに注意したい点
時期
ハイカットの散布適期は以下になります。
ノビエ | 3.5葉期まで |
ホタルイ、ウリカワ、ミズガヤツリ | 4葉期まで |
ヘラオモダカ | 3葉期まで |
ヒルムシロ | 発生期まで |
セリ | 再生始期まで |
オモダカ | 矢じり葉3葉期まで |
キシュウスズメノヒエ | 3葉期まで |
クログワイ、コウキヤガラ、シズイ | 草丈30cmまで |
イボクサ(一年生雑草) | 茎長20cmまで |
クサネム(一年生雑草) | 草丈20cmまで |
アオミドロ・藻類 | 表層はく離は発生始期まで |
効果・薬害・毒性
下記の有効成分を含む農薬の総使用回数は以下の通りなので、使用回数には注意してください。
- シハロホップブチル 3回以内
- ジメタメトリン 2回以内
- ハロスルフロンメチル 2回以内
- ベンゾビシクロン 2回以内
水産動植物(甲殻類、藻類)に影響を及ぼすので、河川、養殖池等に飛散、流入しないよう注意して使用してください。無人航空機による散布で使用する場合は、河川、養殖池等に飛散しないよう特に注意してください。散布後は水管理に注意する必要があります。
具体的には、散布に当って、水の出入りを止めて湛水状態のまま田面に均一に散布し、少なくとも3~4日間は通常の湛水状態(水深3~5cm)を保ち、散布後7日間は落水、かけ流しはしないでください。
その他
本剤は眼に対して刺激性があるので、眼に入った場合には直ちに水洗し、眼科医の手当を受けてください。散布後は、手足、顔などを石鹸で洗い、よくうがいをしてください。
除草剤全般の使用時の服装や注意点については、下記記事を参考にしてみてください。
まとめ
除草剤を上手に使うことで害虫の発生を減らし、殺虫剤の使用量を抑えることができます。田んぼに生えてくる雑草、また全般的な防除方法や除草道具については、下記を参考にしてみてください。
(補足)水稲栽培のスケジュール
稲の生長は、体を作る「栄養成長期」と子孫を残すための「生殖成長期」の2つに分けられ、さらに、「栄養成長期」の中でも「発芽・幼苗期」「分げつ期」、「生殖成長期」の中でも「幼穂形成期」「穂ばらみ期」「出穂期・登熟期」に分かれます。
この成長過程に沿って、作業スケジュールが決まっています。
栄養成長期
発芽・幼苗期
13度以上の温度と十分な水分(酵素含む)で、籾(モミ)のなかの胚乳を養分にして幼芽と幼根が成長し、発芽します。発芽した種籾は苗床(育苗箱)にまき、上から土をかけることで、やがて土の上に芽を伸ばし、葉の数を増やしていきます。
作業としては、育苗箱に「種まき」し苗を育てる「苗づくり」、そして田植え前に「元肥(基肥)」を行って、田んぼの土を耕し、水を入れ起こして平らにする「耕起・代かき」を行います。
稲の「種まき」「苗づくり」は、具体的には、以下の作業をします。
- 床土(とこつち)と肥料を育苗箱に詰めます
- 播種の直前にジョウロなどでしっかり灌水(かんすい)します
- 播種機を使って芽出しをした種を均一にまいて、覆土します
分げつ期
分げつとは、稲の枝(茎)が分かれていくことで、芽を伸ばした種を田んぼに田植えし、苗が田んぼに活着し、根付くと、本格的な分げつ期です。稲は茎の数をどんどん伸ばしていきます。
作業としては、田に苗を植え付ける「田植え」や、田や畔(あぜ)、畦(うね)に雑草が茂る季節なので、草とり、草刈りといった「除草」がメインになります。
生殖成長期
幼穂形成期
夏に入って分げつした茎が1番多くなる頃で、稲は茎元に穂のもとを作り始めます。
作業としては、水を抜いて田の土を乾かす「中干し」や「追肥(穂肥)」を行います。
穂ばらみ期
止葉と呼ばれる最後に出る葉の鞘が膨らんで見える頃です。
作業としては、病害を防ぐための「病害虫の防除」がメインになります。
出穂期・登熟期
夏の暑い頃、淡緑色の穂が止葉の間から顔を出し、次々と開花を開始します。自家受粉の受精が終わると、米の粒を太らせる登熟期が始まります。味は、登熟期にどれだけ光合成を行えたかに影響を大きく受けます。
作業としては、実った米を刈り取る適期のため、「収穫」がメインになります。