山林に生い茂った竹を鋸(ノコギリ)や鉈(ナタ)で伐採するのは、大変な作業です。少しでも楽をするためにも、ぜひ竹切り用チェンソーを使ってみましょう。この記事では、竹切り用チェンソーを使った竹伐採について解説します。
竹切り用チェンソーとは?
竹切り用チェンソーとは、その名の通り竹を切ることに特化した専用のチェンソーです。一般的なチェンソーとの違いは、ソーチェーンがフルカッタータイプであること、ガイドバーがカービングバーであること、ハンドルがトップハンドル(トップハンドルソー)であることなどの特徴を備え、竹を切ることに特化させている点です。
一般的なチェンソーでも竹は問題なく切れますが、ソーチェーンを押し当てた瞬間に竹がしなるため切り進みにくかったり、切断面が毛羽立ってしまったりということが起きます。一方、竹切り用チェンソーであれば使い勝手よく利用することができます。その背景には、フルカッターのソーチェーンでは硬い竹の繊維であってもよく切れること、竹は密集して植生するため小回りの利くチェンソーが便利であることなどがあります。竹切り用チェンソーが必要かは、以下の順に考え、検討してみるとよいでしょう。
- 竹を切る頻度が少ない場合、一般的なチェンソーの利用でも構いません
- 竹を切る頻度が中程度の場合、ソーチェーン(替刃)を竹用のフルカッタータイプに交換するとよいです
- 竹を切る頻度が多い場合、竹切り用チェンソーを入手するとよいです
竹切り用チェンソーは比較的安価ながら便利なので、竹を切る頻度が多い場合には購入を検討してみるとよいかもしれません。なお、竹切り用チェンソーで、竹以外の樹木を切ることも問題なくできますが、フルカッターは高価かつ目立ての手間が2倍になることもあり、竹伐採以外の用途で使用する人は少ないです。
竹切り用チェンソーの選び方
繰り返しになりますが、すでにチェンソーを所有している場合には、後述する竹用のソーチェーン(替刃)を購入して交換することをおすすめします。購入や交換も簡単で、費用が抑えられる点がメリットです。
一方、チェンソーを所有していなかったり、チェンソーを所有していても竹を切る頻度が多い場合には、竹切り用チェンソーを購入することもおすすめです。ここでは、竹切り用チェンソーを購入する場合の選び方とおすすめ製品を紹介します。
竹切り用チェンソーは、それほど多くの種類があるわけではありません。以下のように、「エンジン式」と「充電式」のチェンソーに分けて検討してみるとよいでしょう。
エンジン式
エンジンを動力とするエンジンチェンソーの中で、おすすめの竹切り用チェンソーは、ハイガー産業(HAIGE)の「HG-TM32600」です。25cc(1.3馬力)の2サイクルエンジンが搭載されおり、切れ味もパワフルです。フルカッターのソーチェーン、カービングバー、トップハンドルが採用されるなど工夫と改良が重ねられている竹切り専用チェンソーです。
ハイガー産業(HAIGE)は、農業機械を含む産業機械の開発販売を行うメーカーです。群馬県に本社を構え、中国の工場で製造した高品質な製品をリーズナブルな価格で販売することを標榜しています。安かろう悪かろうとも評されがちなMedeInChinaの製品を会社一丸の努力によって高い品質まで向上させてきました。
また、当社の成長の要因のひとつになったのがDtoCというビジネスモデルです。DtoCとはDirect to Consumerの略で、卸売などの中間業者を介さずにメーカーが消費者と直接取引を行うビジネスモデルです。ハイガー産業の場合は、自社オンラインショップや大手通販サイト(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど)を通じて製品を販売しています。
こうした努力やビジネスモデルの結果、安価ながらコストパフォーマンスの高い製品を展開することに成功しています。
充電式
バッテリーを搭載する充電式の電動チェンソーもコードレスなので、竹林の中で容易に取り回すことができ便利です。動力がエンジンではなくモーターのため、始動も楽で、騒音も小さいです。さらに、排気ガスがなく環境に対してクリーンというメリットもあります。一方で、充電切れに注意しなくてはいけなかったり、切れ味で劣ったりというデメリットがあります。
マキタ(makita)
マキタの充電式の電動チェンソーでは、ソーチェーンをフルカッタータイプに交換して、竹切り用チェンソーとして利用できます。ソーチェーンをフルカッタータイプに交換できればどの機種でも問題ありませんが、中でもおすすめなのが「MUC254CDGR」です。ガイドバーの長さも250mm(10インチ)と丁度よく、カービングバーが標準装備されており、本体質量も3.1kgと軽い点などが、竹切り用チェンソーに適しています。
リョービ(RYOBI)
リョービでは、充電式の電動チェンソーのほかに、レシプロソーを使って竹を伐採する方法も提案しています。チェンソーほどのパワフルな切れ味はありませんが、竹を切るには十分なハイパワーで、直径14cmの孟宗竹であっても素早く切断します。また、竹林のような密集した環境下で軽量かつ軽快に活躍できます。刃を替えることで、雑木の伐採、果樹や枝の剪定、金物資材の切削などにも使えます。
竹用の替刃
現実的には、ソーチェーンで世界No.1ブランドとされているオレゴン(OREGON)の竹用の替刃を利用することが圧倒的に多いはずです。オレゴンのソーチェーンは、日本の主要なチェンソーメーカーやチェンソーブランドほぼ全てで採用されています(マキタ、リョービ、共立、新ダイワ、丸山、ハイコーキ、タナカ、ハイガー、ゼノア、シングウなど)。また、海外チェンソーメーカーであるスチールとハスクバーナでは、純正のソーチェーンが採用されていますが、オレゴンのソーチェーンとも互換性があります。
オレゴンのソーチェーンは、品番の表し方にルールがあります。つまり品番を見れば、ソーチェーンの形状であったり、長さであったりがわかるようになっています。たとえば、品番「25F60E」や「91F52E」のように、前半部分が25Fもしくは91Fになっているものが竹用のソーチェーン(フルカッター)です。
- 品番の前半部分にある数字は、ソーチェーンのサイズ(ピッチとゲージ)を表しています。
ドライブリンク刻印番号 | 11 | 16 | 18 | 20 | 21 | 22 | 25 | 26 | 27 | 58 | 59 | 68 | 72 | 73 | 75 | 90 | 91 | 95 |
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ピッチ | 3/4″ | .404″ | .404″ | .325″ | .325″ | .325″ | 1/4″ | .404″ | .404″ | .404″ | .404″ | .404″ | 3/8″ | 3/8″ | 3/8″ | 3/8″ | 3/8″ | .325″ |
ゲージ | .122″ 3.1mm | .063″ 1.6mm | .080″ 2.0mm | .050″ 1.3mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .050″ 1.3mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .063″ 1.6mm | .050″ 1.3mm | .058″ 1.5mm | .063″ 1.6mm | .043″ 1.1mm | .050″ 1.3mm | .050″ 1.3mm |
- 同じように、品番の前半部分にあるアルファベットは、カッターのタイプと特性を表しています。
ソーチェーンタイプ | A | AX | AP | BC | BPX | CJ | CJX | CK | CKX | CL | CLX | CP | DP | F | H | HX | HJX | J | JGX | JPX | JX | L | LGX | LPX | LX | M | R | RA | RD | PS | PX | S | SG | SL | VG | VPX | VX | VXL |
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カッターのタイプと特性 | マイクロチゼルカッター 25A:標準 27A:スキップ | マイクロチゼルカッター スキップ | 25AP:マイクロチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 72AP:セミチゼルカッター スキップ | チッパーカッター 標準(11BCのみ) | 低振動マイクロチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、スキップ | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、セミスキップ | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、セミスキップ | チゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、標準 | デュラプロチゼルカッター(スクエア) 山型デプスゲージ、標準 | チッパーカッター バンパードライブリンク、標準 | セミチゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | マイクロチゼル、フルカッタ― | ハーベスター 標準 | ハーベスター 標準、アサリが大きいタイプ | ハーベスター スキップ、アサリが大きいタイプ | チゼルカッター 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター 山型デプスゲージ、スキップ | チゼルカッター バンパードライブリンク、スキップ | チゼルカッター 標準 | チゼルカッター 標準(.404″ 58L&59L) | チゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動チゼルカッター バンパードライブリンク、標準 | チゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | マルチカット | 縦挽きチェーン、マイクロチゼルカッター | 縦挽きチェーン、マイクロチゼルカッター | 縦挽きチェーン、セミチゼルカッター 標準 | パワーシャープチェーン 山型デプスゲージ、ガイダンスドライブリンク 標準(自動目立て) | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパードライブリンク 標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準、アサリの狭いデザイン | チゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準 | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパータイストラップ 標準 | 低振動マイクロチゼルカッター 山型デプスゲージ、バンパードライブリンク アサリの狭いデザイン | 低振動シャンファーチゼルカッター 山型デプスゲージ、標準 | 低振動セミチゼルカッター ロングトッププレート、山型デプスゲージ 標準 |
- 品番の後半部分にある60Eや52Eは、ソーチェーンの長さ(ドライブリンクの数)を表しています。
以上の見方にもとづき、購入すべき竹用の替刃を特定します。まず、所有するチェンソーについて、ソーチェーンのサイズ(ピッチとゲージ)が25Fか91Fのいずれかに該当するかを確認します。次いで、ソーチェーンの長さ(ドライブリンクの数)を確認します。これらにより、購入すべき竹用の替刃の品番を特定できるので、あとは注文をするだけです。
なお、マキタ(makita)やハイコーキ(HiKOKI)では、純正の竹用替刃を販売していますがオレゴンのOEM製品ですので、品番の表し方は同じです。
チェンソーによる竹の切り方
現在は、厚生労働省によって公布された改正労働安全衛生規則(安衛則)により、胸高直径20cm以上の立木について、受け口、追い口、つるを確保し伐倒することが義務付けられています。竹の場合は、大型種の孟宗竹であっても胸高直径20cm以上のものはまれなので、法令による規制の対象となることはほとんどないと考えられます。ただし、太い竹に関しては、安全のため法令で定められた方法に準じて伐倒するとよいでしょう。
竹は、節間が空洞で、樹冠も広くならないため、樹木より軽量です。そのため、切断後に倒れてきた幹に押しつぶされるような危険は小さいです。したがって、細い竹に関しては、チェンソーで一刀両断してしまっても現実的には問題ありません。
以上のように、太い竹に関しては法令で定められた方法に準じて伐倒し、細い竹に関してはチェンソーで一刀両断する方法が好ましいです。こうした切り方も含めて、国立研究開発法人の森林総合研究所が「チェーンソーによるタケの伐倒方法」として分かりやすくまとめていますので、参考にするとよいでしょう。
なお、竹の場合は他の樹木に比べてしなりが強いので、はね返りが起きることがあります。特に頭部や顔面を守るためにも、ヘルメットや保護網などの保護具を着用することが望ましいです。
まとめ
竹切り用チェンソーとは、その名の通り竹を切ることに特化した専用のチェンソーです。一般的なチェンソーとの違いは、ソーチェーンがフルカッタータイプであること、ガイドバーがカービングバーであること、ハンドルがトップハンドル(トップハンドルソー)であることなどの特徴を備え、竹を切ることに特化させている点です。
一般的なチェンソーでも竹は問題なく切れますが、ソーチェーンを押し当てた瞬間に竹がしなるため切り進みにくかったり、切断面が毛羽立ってしまったりということが起きます。一方、竹切り用チェンソーであれば使い勝手よく利用することができます。その背景には、フルカッターのソーチェーンでは硬い竹の繊維であってもよく切れること、竹は密集して植生するため小回りの利くチェンソーが便利であることなどがあります。
なお、竹伐採以外に、除草剤や防草シートを利用して竹を防除する方法もあります。ぜひ状況や環境に適した方法を検討してみてください。